旅のお宿

あとがき

 疲れたべ。
 ということで、パワフルアカデミー編、後書きです。
 13話ですよーと予告しながら、結局前後編・・・orz
 しかも長い・・・orz
 ブログの性質というか、記事の並び順上、どうしても後編が先に目に入ってしまいますが、目をつぶって前編から読んで下さいね、と、ムリを言ってみるorz

 どうだったでしょうか。
 ・・・こういう抽象的な尋ね方をしても困ってしまいますよね。
 ちょいと項目立てしてみましょう。

1.主人公(綾瀬 有紀)について

 友沢くんとみずきちゃんが大卒という原作の設定に合わせて、23歳、出身は・・・白樺学園大です。
 明るいお調子者で、まぁ悪たれ男子大生というとこんなカンジかいな、と思いながら描いてました。
 小説全般が好きでマンガ・アニメ・ゲームはあまり嗜まない。学校の成績は中の下。
 ルックスは、黙っていれば2枚目で通るけど・・・というヤツです。
 今明かされる真実!(笑)

 描いておいて何ですが、わたし、あんまり野球関係のマンガや小説を読んでないです。
 皆さんオススメの「MAJOR」とか「Mr.フルスイング」とか、読もうかとも思いましたが、お金がなく断念。
 唯一の購読書は「あぶさん」・・・
 アカデミー編に使えないですよ・・・
 どういう主人公が今のトレンドなのか知らないので、パワプロ君の普段の言動を参考に、多少荒っぽくしました。
 パワプロ君だと良い子過ぎて趣味に合わないのです(笑)。

 こんな主人公だけど、好きになってもらえたでしょうか。

2.サクセスの登場人物について
 
 実際のプレイではあんまりイベントが起こせず、友情タッグも早賀&矢部君と、出木&ゴンタのみというのはナイショ。
 本作では全然出番がなかった千夏ちゃんを彼女にして、休日の片方は必ずデートしてたのはもっとナイショ。

 矢部君の影がどうにも薄いですねぇ。要所でやらかしてくれているカンジにしましたが。
 わたしのアカデミー編理想の打順は、車・矢部・主人公・友沢・ゴンタ・・・です。
 佐藤くんは・・実際のサクセスだと弱いので。絶対ネコかぶってるだけだと思いますが!
 チャンスメーカーの車が打って、矢部君がバントでつないで、クリーンアップに持っていく、と。

 投手陣は・・霧尾さんゴメンナサイ、いつもは先発起用されててもわざわざ下げて出木に変えます。負け運が、ね・・・
 その分、本作では思いっきり暴れてもらいました。
 出木がいつも打線の援護をもらえないのも実際のサクセス。
 みずきが意外と打たれるのも同様。
 あー、パワフルアカデミー、サクセス投手より継承に頼ってるかもです・・・

 サクセス選手について、イメージと違う!とかこっちの方が良い!とか、ありますか?
 ・・・みずきちゃんとのラブコメは・・・ツッコまないでくださいね・・・

3.ライバルチームの選手について

 サクセス日記を小説風にした最大の理由。
 神高以外、固有の顔すらもらえない彼らに脚光を!
 2名女性化した上、どうにもとんでもないことになりがちでしたが、まずは満足(島津のおいちゃん風)。
 専用特殊能力を全員に持たせたまでは良かったですが、神高にも何かつけた方が良かったでしょうか?
 なんとなく、一芸に秀でるよりは、万能の天才。神高のイメージはそんなだったので、特別なモノなんてなくても「勝てる気がしない!」キャラに見えてくれれば、と。
 中盤以降は優秀な野手陣に助けられていた気がしなくもないですが。
 ちなみに、実際のサクセスと違い、最後まで改心しないのはわたしの解釈です。そう簡単に寝返っちゃ、悪の魅力が薄れるというモノ。

 こんなのもアリでしょうか。おもしろかったーと言ってもらえるようでしたら、相手選手のネタにますます乏しい社会人編・プロテ編でもこの方針で行きます。
 やりすぎた時は、野球本来の良さを損なう危険を感じましたが。

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綾瀬のアカデミー奮闘記 ファイナル〜後編〜

大会決勝戦 5回裏 ノーアウト1塁3塁 0−2

 表の失点を取り返すチャンスが巡ってきたァ!
 先頭打者の友沢が鋭いバッティングでライト線ギリギリを撃ち抜く!
 アダムの野郎、打撃はともかく、守備はサッパリだ。ライト・天下が素早く追いついたので2塁打にはならなかったが、それでもこの試合、パワフルアカデミーの初ヒットが生まれたッ!
 続くゴンタ、まだ右手首は痛々しいが・・・

 カキィィィィン!!

 !!?!!
 やってくれる・・
 負傷した右手をほとんど使わず、ほとんど左手一本で神高のシュートを流し打ち!
 絶妙の角度に舞い上がった打球は美しい弧を描いて右中間へ。
 これでランナー1塁3塁!しかもノーアウト!
 一気に神高を倒すチャンスで、打席に入るのは6番!強打者・佐藤くん!!
「ヌッッッハァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 グアッキィィィィィィン!!!

 おなじみの咆吼と共に放たれた打球はグングン伸びてライトスタンドポールギリギリへ・・・!
 !!!
 ライトポールに命中!
 ホームランだぜぃ!!よっしゃァ!大・逆・転!

 ・・・?
 なぜだか、審判団が集まって協議している。
 ナニが問題だ?
 球場内にアナウンスが流れる・・・
「ただいまの打球は無効。パワフルアカデミーにアウトが与えられます。」
 は!?
 これにはさすがの猪狩先生も抗議に。

「佐藤が打撃の際、バッターボックス外に足をついていたと判定された。」猪狩先生が淡々と説明する。
「なぜですの!カレ・・・私がそんな初歩的なルールミスを犯すハズが・・・」愕然とした佐藤くんが抗議する。
「バッターボックスには確かにラインを踏み越えた靴跡が残っている。ただ・・・」猪狩先生が言葉を切る。「それが打撃時のものか、打撃後のものかは分からない。一番よく見えていた主審が打撃時だというなら、そのジャッジに従うしかないだろう。」
「あの主審、明らかに向こう寄りですよ!あんなのの判定なんて・・」オレも抗議せずにはいられない。せっかくのホームランを帳消しにされたばかりか、アウトにされて佐藤くんは泣き崩れている。

「どうせそんなものだ。」猪狩先生がうんざりした顔をする。「僕たちは何をしに来た?ただ勝てば良いんじゃないだろう?」
 騒然となったパワフルアカデミーベンチが静まりかえる。
「そういうこった。」渋井先生が引き取った。「敵がどんだけ汚ぇマネしようが、同レベルの事をやり返したり、ウダウダ文句ばっかり言って試合を止めてるようでどーする!?行ってこいッ!そして見せてくれッ!神童学長初め、オレ達がてめぇらに教えた『真の野球』ッてモンを!!」

 東京ドーム VIPルーム
「ざんねんでしたなぁ」ワイングラスを片手に、秘書を従えた東日本アカデミーの会長が隣の神童学長に声をかけていた。
 抗議しかけた千夏ちゃんを制し、神童学長は穏やかに微笑む。
「少し、力が入りすぎたようですね。この力が抜けてくる終盤戦が楽しみです。」
(ふん。若造め・・いつまで冷静でいられるか見物だな・・・)
 東日本の会長は、不味そうにワインを飲み干した。

 東日本の横暴はまだ続く。
 この回、続くローズ君がレフトに犠牲フライを挙げたが、今度は友沢のタッチアップが速すぎたとしてアウト扱いに。
「これ以上の不当な抗議による引き延ばし行為は反則行為と見なす!」
 こちらの機先を制し、主審が勝ち誇ったように宣言する。
 ・・・まぁ、こっちはバカバカしくて抗議に行く気にもならなかったが。
 会場からはブーイングの嵐だ。本来なら東日本を応援するはずのライトスタンドからも非難の声が挙がる。

「つまらん小細工を弄するものよ。」
 東日本ベンチ、井倉が心底軽蔑したという声を出す。
 神高は不機嫌そうに黙り込んだ。自らの失点が無効になったのはいいが、さすがに寝覚めが悪いらしい。
「バカくせぇ試合さね。」天下が寝そべりながらつぶやく。
「恥というモノを知らないのかッ!?貴様らァ!!」ラフティが神高につかみかかる。アダムがその腕を捕まえ、ひねりあげた。
 大須さんも止めに入る。板子さんが右往左往する。
 正岡だけがベンチの状況に目もくれず、審判団を見ていた。
「・・・さすがに、やられッ放しじゃくやしいからね・・・
     暗闇に 灯をともしけり 義の光       」

「ところで、神高会長。」神童学長がにこやかに東日本の会長に話しかけた。
「・・なにかね?」振り返った会長の目の前に、一枚の紙。
 みるみる会長の顔が青ざめる。
「・・・私も、こんな形であの子達のアカデミー最後の戦いを終わらせたくない。」神童学長は笑みを消し、真剣な眼差しになる。「速やかに、買収した審判を退場させてもらおう。替えの審判はNPBに連絡して手配してもらっています。」
「くッ!」
「もし、この要求が受け入れられないのなら・・」神童学長が声を落とす。「この審判買収の証拠をNPBに提出します。」

 球場内に再びアナウンス。・・・審判交替?
 何も知らないベンチのオレ達。
 ファンの大ブーイングに、さすがの東日本もまずいと思ったというところか。
「これだけの後押しを受けちゃあ、ますます負けられないな?」
 隣のみずきを見る。次はコイツの出番だ。
「ふふん!セクハラキャプテンの心配はいりませんよーだ!」
「まぁだそんなこと・・・」

 ん?キャプテン?

 オレが不意に黙ったので、逆にみずきが不思議そうな顔をしてオレをのぞき込む。
「いつオレがキャプテンになったんだ?」
 前の座席からため息がもれた。友沢だ。
「あれだけキャプテンのようなカッコをしておいて、素でしたとでも言うつもりか?」
 いや、確かに調子に乗ってイロイロやった覚えは・・・
「でもいいのかよ?そんなテキトーにキャプテン決めて・・」
「『テキトー』はヒドいなぁ。」あおい先生が笑いかけてきた。「人物・実力、共にチームメイト全員一致の推薦なんだけどね?」
「綾瀬くんミーティングで寝過ぎでやんす!決めたときも爆睡中でやんした!」
 気付いてたら起こせよ・・・と、矢部君に責任転嫁してみる。
 全員一致、ねぇ・・・
 ならしょーがねーか!やってやろうじゃないの!
「さぁて、こっからが本番だな。」
 ベンチを見回すオレ。チームメイト全員がうなずき返す!
「反撃開始といきますか?」

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綾瀬のアカデミー奮闘記 ファイナル〜前編〜

8月第2週 土曜日 午後5時30分

 とうとう来たぜ・・・と、我ながらボキャ貧を感じるコメント。
 東京ドーム。東日本アカデミーとの決勝戦の舞台。
 東北アカデミーは東日本から圧力をかけられたのか、準決勝で板子さんが「口寄せ」を使うことはなかったようだ。
 どこまでも東日本は汚ぇ。
 ま、今日という今日は・・・
 叩きつぶして!踏ンづけて!干物にして!ションベンかけて!庭に穴掘って埋めて!また掘り返して!それからそれから!もうボッコボコにしてやるから覚悟しやがれ!

 ん?
 ベンチで一人燃えているオレのもとへ、見慣れたヤツらがやってくる。
 大須さん・・ラフティ・・天下・・・
 感動的だな!かつてのライバル達が最終決戦を前に激励かッ!
「あー、綾瀬サン・・その・・・」今日の天下はやけに歯切れが悪い。
 照れてんのか?このこのッ♪
「ふむ。運命とは時に、皮肉なモノだ。」井倉がじじむさいことを言い出す。
 運命の皮肉じゃねぇ!実力だっつーの!
「・・・・あの・・・」また板子さんが泣きそうな目を向ける。
 待っててくれ!ヒーローインタビューが終わったら、存分にこの胸で泣かせてやるから!
「・・・すまんッ!!」ラフティが勢いよく頭を下げる。
 まぁまぁそう遠慮するな。問題は全部オレが引き受けてやる!
「やれやれ、相変わらずなお人ですね。」正岡がクスクス笑っている。
「当たり『前田のクラッカー』よッ!!たかが決勝戦如きにビビるオレ様じゃないってばよ!!」
「みんなを代表して言うけど・・・」代表しなくても大須さんにさえ『ガンバって♪』って言ってもらえれば勇気100倍であります!

「私達、東日本アカデミーの選手として決勝に出るから。」
 ・・・・・・はい?・・・・・・・
「東日本が転入の時期を早めてな・・」井倉が続ける。「貴公らの快進撃に警戒して、万全を期するようだ。」
 ・・・・・・ええと、大須さん、なんて言いました?・・・・・
「あー、悪ぃな綾瀬サン!そーゆーワケで、こっちもアカデミーの存亡かかっちまってるから、手抜きもできねーんだわ。」天下が頭を掻く。
「・・・・・ごめんなさいッ・・・・」
 板子さんが勢いよく謝ったあと、キャプテン軍団は反対側のベンチへ・・・
 反対側のベンチ・・・東日本のベンチ・・・

 おおうわぁあっっ!!そんなのアリかーーーー!!!!
 スタメンが発表される・・うちはいつもの野手に先発・出木。
 東日本は・・・

1番 ライト    天下
2番 センター   正岡
3番 レフト    板子
4番 ファースト  アダム
5番 サード    ラフティ
6番 キャッチャー 井倉
7番 セカンド   大須
8番 ショート   大西
9番 ピッチャー  神高

 ・・・ナンデスカソレハ!?
「鉄壁の布陣だね・・」あおい先生がため息をつく。
「『獅子はウサギを狩るのにも全力を尽くす』ということさ。」
 神高のヤツが涼しい顔してあいさつに来やがった。
「・・・よくもまぁ、恥知らずなマネができるものだな。」
「父様のやることさ。よっぽど負けたくないんだろうけど・・・」神高の笑顔が初めて崩れ、暗い一面をのぞかせる。
「・・・君たち風情に僕が打たれるとでも思われたのかな・・」
「ど、どーでもいーけど・・・」ちょっと神高がヤバイ雰囲気なので、あわてて話題を変える。「大西さん、ピッチャーだろ?なんでショートよ?」

 一瞬、あっけに取られた顔をした神高だったが、次第にその顔に嘲笑が浮かぶ。
「あのね、綾瀬君。大西さんがピッチャーをしていたのは、ボクや猪狩先生と甲子園で戦ってたころの話だよ?高校卒業後、渡米した大西さんは、野手に転向して、もう長年ショートとして活躍してきてるの。」
「相手チームの主力選手のことも知らないなんて、実力差以前の問題だね。」神高が追い打ちをかける。
「・・・じゃあなんだ?こないだ来たときに大西さんが投げてたのは・・・」
「昔取った杵柄、というヤツだよ。君たちの相手をするだけなら、10年前の感覚で十分ということさ。」神高がいよいよバカにしたような笑いを浮かべる。「まさか、『あれなら勝てる!』とでも思ってた?」
 ・・・悔しいが、言い返せねぇ・・・
 まさに鉄壁。どこにも隙のない布陣というワケか。
「まぁ良いじゃない?大西さんが出ようが出まいが、結果はおんなじだし?」神高がイヤミを残して悠々とベンチに引き揚げていく。
「あ、そうそう。プレゼントをあげるよ。試合は君たちが後攻で良いよ?」振り返ってまだ余計なことを・・・
「せめて最後まで得点しようと足掻いてみるがいいさ。」

 こっちのベンチ裏では出木が沈痛な表情だ。
「しっかりしてくれよ先発!投げる前から大量失点したような顔するなよ〜!」
「す、すいません!先輩!」そう言って出木は笑おうとするが・・・笑顔が凍り付いて引きつってしまっている。
「もう・・・前回の誰かさんと言い、なんでこう・・・」
 言いかけたところで後頭部にドロップキックが命中した。
「おわッ!」
「だぁれが誰かさんですってぇ?」みずきがいつの間にか背後にッ!
「全くバカにしてぇ!」みずきが出木に向き直る。「そんななっさけないカオしてるなら、あたしが代わりに出ちゃうよ?」
「そーだぞ出木?そんなことになったらますます勝てな・・」
 オレの相槌はひじ鉄によって阻まれた。
「はい!ボク、頑張ります!」出木が元気よく立ち上がる。
 プッ!相変わらず出木は上手いこと言う。このタイミングで元気を出されて、みずきは「それってあたしに投げさせるくらいなら自分で頑張りますってこと?」という顔で立ちつくしている。
 「リューヤ、ツヨイ!ダイジョーブ!」ゴンタも胸を張る。

 ダイジョーブだと思いたい。いや、その言葉を実現するには、オレら全員でガンバらないとダメか。
 こりゃスゴい試合になりそうだ・・・

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綾瀬のアカデミー奮戦記 vol.12

8月第1週 土曜日

 全試合ビジターというのも嫌がらせのうちか。今日の試合は大阪だ。
 対戦相手は、西日本アカデミーが勝ち上がってきた。あの九州アカデミーを破るとは・・・
 東日本アカデミーの対戦相手は東北アカデミーに決まったようだ。

 こっちはハードな試合を先週土曜、今週月曜とこなした上、あちこち引きずり回されてヘロヘロだよ・・・
 愚痴りながら大阪の街を眺める。名物の串カツもたこ焼きも、試合前に食べると重そうだ。
「おお!そう言えば、梅田の地下に旨いカレー屋があってな・・・」
 霧尾さん、そういう話は勝ってからにしようぜ・・・
「行こうでやんす!カツカレーを食べて先勝祈願でやんす!」
 だから重いって!矢部君・・・

 なんだか疲れがとれねーな。
 ミーティングもほとんど寝てて聞いてない。確か、もう野手に変更はなくて、先発がみずきというところまでは覚えている。
 ふわぁぁ・・眠ぃ・・・・試合まで寝るか?
「おーおー余裕さね!」
 声をかけられて重いまぶたを上げる。うちのチームメイトじゃない?
 目の前には、黒の革ジャンにジーンズという出で立ちの兄ちゃんが立っている。
 革ジャンの下は、自信があるのか素肌だ。細身だが引き締まっている。

「こりゃ負けられないさね!」
 何弁だよそれ。
 革ジャンは口に葉っぱをくわえている。髪は短めだが、野球選手らしくない。しかし・・・
 得てして、キャプテンクラスはキャプテンらしからぬヤツがほとんどだった!
「お前さんが西日本のキャプテンか?」
「おう!天下 一虎(てんか かずとら)さ!」
 ・・・コイツの親は相当重度のトラキチだな。
「オレの名前は・・」
「綾瀬さんさね!有紀なんて名前してっから、てっきり美少年かと思ったさ!」
 ・・・ケンカ売ってんのか?お前?
 美少年と言われたくもないが、面と向かって否定されると、なんかオレ、すげぇ不細工みたいじゃん・・・

「正直なとこ・・・」
 天下はポッケに手を突っ込んだまま、少し真剣な眼差しになる。「アンタらに優勝してもらいたい・・ッて気持ちもあるんさ。だが・・」
「余計なこと考えんのはやめようぜ?くだらねぇ年寄りの悪企みでせっかくのゲームを台無しにすることもないだろ?」
 オレの言葉に、天下もニヤッと笑ってみせる。
「同感さね。こっちにも手加減するつもりはねぇんさ。いっちょ・・」
 天下が真正面からオレを見つめる。
『ハデにやるか!!』
 予期せず、2人の声が重なる。
 おもしろそうなヤツが来たじゃないか!おかげで眠気が吹っ飛んだよ。

大会準決勝 2回裏 0−0 ノーアウトノーラン

 ふむ、しゃくな話だが・・・
 みずきは月曜の不調がウソみたいに調子が良い。初回、西日本の上位打線をわずか5球で片付けてみせる。
 こっちは2回までで2安打。オレ、友沢と打ったが、まだまだ得点にはならない。
 天下はライトに陣取っている。今のところ、ヘンな動きは見せていない。

 そしてこの回・・・
 4番・天下がバッターボックスに入る。
 軽くバットを振って調子を確かめると、マウンド上のみずきにニヤッと笑いかける。
 ・・・ああいう笑いをぶつけられると、みずきのことだ。こりゃ・・

 予想通り。
 天下への初球。みずきはいきなりど真ん中にストレートをぶち込む!
 胸の揺れが伝わってんだかなんだか、みずきのストレートは微妙に揺れるムービングファストというヤツだ。ここ最近、磨きをかけたからか、更に胸が成長したからか、ますます揺れが大きくなって打ちにくい。

 が。
 天下、構わず打つ。
 カキィィィィィィン!
 うおッ!
 強烈なライナーがライト線ギリギリを撃ち抜く。
 ま。
 すかさずオレが送球して2塁を塞ぐ。天下は2塁も狙ったようだが、すぐに無理と判断したようだ。
 オレを見て、またニヤッと笑う。
 ふふん!
 オレも鼻で笑い返す。見たかオレ式レーザー!

 だが、天下の真骨頂はここからのようだ。
 続く5番の打席、天下はリードを大きく取り、みずきを横から挑発する。
 みずきも気にはしているが、いかんせん、ファースト・佐藤くんの守備に不安があるので、ヘタに不意打ち牽制すると、思わぬエラーになりかねない。
 チラチラ天下を見ながら5番を追いつめていく内に・・・
 天下、盗塁ねらい!
 すかさずゴンタが2塁に送る。
 だが。
 天下の瞬発力は凄まじく、ゴンタの強肩を軽く上回って2盗成功。

 さらに、5番が倒れた後、6番の打席でまたしても天下が盗塁。
 今度は3盗。そうそう成功するモノではないが・・・
 紙一重で天下の足がゴンタの肩を凌駕する!
 すかさず6番が外野に打ち上げて西日本、1点先制。
 1安打、それもただのヒット。
 そこから点につなげるとは・・・
 準決勝だ。まぁ、楽に勝てるとは思ってなかったけどな。

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綾瀬のアカデミー奮闘記 vol.11

8月第1週 月曜日

 松山。愛媛県というと、みかんくらいしか分からない。
 北海道から空路をぶっ飛んできた我らパワデミー軍団!・・・この省略はカッコ悪ぃな・・・今の、なしで。

 どうも調子が悪い・・・
 そりゃそうだ。
 おとといは延長12回までの全力勝負。しかも、試合が終わってからシャワーを浴びる間もなく松山へ。
 2回戦を前に1日ゆっくり休めるように・・という先生達の気遣いだが、正直、まだ疲れが取れてない。
 おととい8回を投げた出木に、今日の登板は無理。で、飛行機内のミーティングで、今回の先発は霧尾さんに決定。野手は変化なし。
 ・・・だったと思う。眠くてよく覚えていない。

 球場に着いたオレらの前に、出迎えは・・・
 お!金髪碧眼の美少女発見!!と思ったら・・・
「やあ、こんにちは。」・・・男だった・・・
 へこみまくるオレに、金髪美少年がにっこり笑いかけてくる。

 男なのが惜しいくらいに綺麗な目鼻立ち。特に目が大きくてまつげが長い。
 髪はブロンド。染めたらこうはならないという自然な美しさ。
 地元の野球少年にしては貴公子然とし過ぎ。

「キミは・・・」分からないときは聞く。これ常道。
「ああ、ボクの名前は正岡 春(まさおか しゅん)。四国野球アカデミーの生徒だよ。」
 キャプテンか!?コイツが!!
 イヤな予感がした。なんとなく、こういういかにも弱そうなタイプと霧尾さんは相性が悪そう。
「遠路はるばるご苦労さま。良い試合にしようね?」
「あ、ああ、フェアに行こうな?フェアに?」
「もちろん!」
 花のような笑みを浮かべて、美少年は去っていった。この匂い・・・香水か?
 去り際、美少年は誰にともなくつぶやいた。

 夏嵐 地上の白球 飛び尽くす

 は?
 振り返る美少年。
「歌はいいねぇ。」

大会2回戦 3回表 3−4 ノーアウトノーラン

 2回が終わって3−4。既に両チームとも打者一巡しようとしている。
 とんだ乱打戦だ。
 1回表、車・矢部君・オレ・友沢と打線がつながり、いきなり2点を先制!
 苦戦続きのうちにしては珍しいほど好調な出だし。

 ところが、その裏、頼みの先発・霧尾さんがいきなり敵に捕まる。
 あの正岡は先頭打者。打席に入り、また何かつぶやいた。
 その直後。
 強烈な当たりがレフト線ギリギリに転がり、一挙ツーベース。
 四国打線は止まらず、ヒットの連打で初回2点を奪取して同点に。
 霧尾さんは完全に制球を乱してしまっている。

 2回表、霧尾さんがお返しとばかりに自らソロホームランを打って1点を返し。
 裏は満塁のピンチを招き、早くも正岡の2打席目。
 ねらい打たれた外角高めの球は右中間を破り、さらに2点追加。
 なおもランナー2塁3塁のピンチはしのいだが・・・

「なあ、ゴンタよ、最初の打席、正岡のやつは何を言ってたんだ?」
 どうも気になるので、キャッチャーのゴンタに聞いてみる。
「ン?ヨクワカラナイ。」ゴンタも首を傾げている。
「『白球や 三塁飛んで 内に入る』だな。」代わりに友沢が答えた。
「なんでお前にわかんのよ?」
「読唇術だ。」お前、そんな特技まで持ってんのかよ・・・
「正岡は名字の如く、句で試合の流れを詠むらしい。」
「どの辺が『名字の如く』なんだ?」
 完全に置いてけぼりのオレに友沢がわざとらしくため息をつく。
「正岡子規、という名を知らんのか。」
 ・・・
「ああ!四国出身の俳句詠む人でしょ!?あたし知ってる〜!」みずきに答えられるとは屈辱だ・・・
「そうだ。あの正岡が明治の俳人と縁者なのかは知らないが、正岡が詠んだ句は現実のものとなる。」
 板子さん以来の超能力者登場か・・・

大会3回戦 5回裏 7−9 2アウト1塁3塁

 その後も両軍激しく打ちまくる。5回表には、用意してあったボールのストックが切れたとかで、試合が一時中断されたほどだ。
 既に安打数はとんでもないことに。
 霧尾さんは結局、さらに3点を失った3回裏までで降板。続くみずきも、4回、2点を失った。
 こっちも3回、4回と打ってはいるが、要所要所で正岡のファインプレーに阻まれる。
 ヤツはセンター。反応が速い上に足も速い。素早く中継してこちらの走者を抑えるため、なかなかツーベースが生まれない。

 そしてこの回、またしてもイヤなタイミングで正岡登場。
 こっちの主力投手で残っているのは京さんのみ。6回くらいまではみずきに踏ん張ってもらわないと後が続かない。

 正岡が三度つぶやく。

 をとゝひの 疲れのあとも 取らざりき

 幻聴が聞こえた気がした。イヤな予感。
 みずきが渾身の一投!
 高橋選手直伝のカットボー・・!

 カッキィィィィィィィン!

 打球は・・・無情にもライトスタンドへ。
 みずきが、完全に崩された。もう後がない・・・

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